私のイチオシ、紹介します! 2015.3

『つぶやきのクリーム The cream of the notes』

森 博嗣/著:講談社文庫

『つぶやきのクリーム』

 「何から手をつけたら良いのかわからない状態とは、なんでも良いから手をつけた方が良い状態のことである」

「成功する人は、成功する方法を知っているのではなく、失敗する方法を知っているだけである」

「トラブルに対する対処こそが、仕事の本質である」

2014年冬に放映された、フジテレビ系TVドラマ『すべてがFになる』の著者であり、某国立大学工学部助教授でもあった森博嗣のエッセイです。エッセイで、内容が上記のようなものだととっつきにくい、難しいと思われるかもしれません。しかし、この作品は文庫サイズの見開き1ページで1テーマなのであっさりと読めます。

 この作品の一ページでも読めば「ズバズバものを言う」と感じるかもしれません。例えば、

ちょっと最近、みんな『頑張れ』を言いすぎだ。この『頑張れ』のあとには、『大丈夫、絶対に乗り切れる。これまでも、乗りきってきたじゃないか』というように言葉が続くのである。しかし、やはり理由も理屈もアイデアもまったくない。したがって、『助言』になっていない。救うヒントになっていないということだ。(p.87)

しかし、これは単にお世辞や社交辞令を排除した素直な文章というだけであり、それがクリーンでかえって分かりやすく感じます。この作品を読むと身の回りの世界の見え方を変えることができるかもしれません。

(田原)