社長の思いつ記 2015.1

 新年あけましておめでとうございます。旧年中は格別のご愛顧を賜り 誠にありがとうございました。私どもの仕事ぶりはお客様にとりまして満足のいく、プラスデコでだめなら諦めがつくほどの信頼を頂けるものだったでしょうか?私に届くアンケートに寄せられたお声以外に多くの“ダメだし”はきっとあったはず。この一年、もっともっと皆様のお声に耳を澄ませ、新たな学びを得、愛される働きぶりにシフトするよう心新たにしています。

 さて、私の個人的なメールアドレスにはセレンディピティ(偶察力)という言葉を埋め込んでいますが、それにはある思い入れがあります。そんな思いをあらたにしてくれた新規事業での一幕を聞いて下さい。

 当社は昨年12月に、製造現場におけるクリーン度の測定機器の生産・販売事業の譲渡を受け、当社で生産した初めての製品を出荷する運びになりました。その出荷に合わせて事業担当者から「出荷式」を企画したいと申し出がありました。「そんな大げさな」とは思いつつ、せっかくのやる気をそいでもいけないとその企画に乗ることにしました。当日、現場を訪ねると白手袋にテープカットの準備までが整っており、恥ずかしさも手伝って「なんと大げさな」の思いはますます増幅したのですが、関係者が控え室で事業移管の実務の苦労や今後の発展を口々に語る姿には、それだけの価値ある事業のスタートなのだと感じられました。大手メーカーから転じた担当者は、出荷式を前職の時から行っていたこと、「この初号機の出荷に期する思いこそ、次の100台、1,000台に通じると信じる」の言には思わず、来賓としてお招きした譲渡元の責任者が「ウチではこんなことをしなかった。この気持があれば、当社でも発展する事業になったかもしれない」ともらされました。

 かける思いの大切さ...、私の中でセレンディピティ(偶察力)と出荷式が結びついた瞬間です。もう30年近く前、社会人となった私の心に響いた最初の話は、まさにこの「かける思い」についてでした。インクジェットプリンタがまだ世に出る前、この発明が着想から「確信」へと変わったきっかけは「ハンダごてと注射針」だったと聞かされました。新たな原理のインクジェット技術は小さなアクシデントが発端です。ある技術者が実験中、身近にあったインクを詰めた注射器の針に熱したハンダごてが触れ、針先からインク滴が勢いよく噴出したのです。これを見逃さず、熱を利用できないかという着想が「確信」へと変わった瞬間でした。意図したことではなく懸命に研究を重ねる中で偶然に起こる出来事とその偶然を見逃さなかった研究者。この偶然の出会いをセレンディピティという言葉で表現されました。

 以来、私にとって‘セレンディピティ’は大切にしたい言葉の一つとなり、そして「心を込めた懸命な仕事には思いがけない天からの味方がつく」ことを信じるようになりました。

 テープカットはやっぱり恥ずかしかったですが、それ以上に嬉しかったし、やってよかったと心から思います。担当者の晴れやかさを見たからではなく、私自身が「譲り受けた以上、大きく育てる」の覚悟を決められたから。この覚悟なしに「やってよかった」と言える結果はありえないと信じられるから。

 皆様の2015年に多くの夢の実現やかけがえのない時間が積み重なり、思い出深い本年となりますことを心よりお祈りしています。

それでは本年もよろしくお付き合い下さいませ。   

(プラスデコ代表:原田 学)