私のイチオシ、紹介します! 『海の見える理髪店』

『海の見える理髪店』   荻原 浩(著)  出版社:集英社

“胸の奥に押し込んでおいた思い”を描いた家族をテーマにした六つの短編集の最後に納められている「成人式」の紹介です。中学生の一人娘が交通事故で亡くなり、5年たった今でも全く傷が癒えない夫婦。落ち込んだまま変化のない生活の中、年末に送られてきた娘あての成人式の衣装カタログを見て、娘の代わり
に夫婦で成人式に出ようと考える。

親は子供を大切に思い、いつまで経っても一生懸命になれる存在であることがとても伝わってきました。この夫婦は自分から悲しみを断ち切れずにいましたが、娘の代わりに、娘のために、と思う事でようやく踏み出すことができました。覚悟が決まれば派手な衣装も躊躇なく、周囲から笑われても気にせず、会場で入場を断られても立ち向かい、今は亡き娘のために必死に頑張る姿に泣けてきます。読まれていない方は、私と一緒に泣きましょう。

プレゼンター 堀内重幸