私のイチオシ、紹介します! 『昨夜のカレー、明日のパン』

『 昨夜のカレー、明日のパン 』

 

河出文庫 / 木皿 泉(著)

 この小説は2014年にBSのNHKでドラマ化されており、ご存知の方も多いのではないでしょうか。七年前にテツコは夫、一樹をガンで亡くし、そのまま嫁いだ家を出ることもなく、なんとなく義父の連太郎と二人で暮らし。お隣のタカラも仕事のストレスで笑うことができなくなり家でボーッとしている。ポッカリと心に穴の開いてしまった三人とそこにかかわる人々。テツコの会社の同僚で、恋人の岩井は少女に結婚資金をだまし取られてしまうお人好し。一樹のポンコツ車を捨てられず婚約者のご機嫌を損ねる従弟の虎雄。山ガールの小川にワクワクの連太郎。タカラが踏み出すきっかけとなる会社の後輩や同級生など、それぞれの人物が主人公になった短編が重なり、ひとつの物語を作っていきます。身近な人たちの何気ない優しさだとか、思いだとか、かかわりによって欠けてしまった心が少しずつもどってゆく。ジンとくる言葉もあちらこちらに出てきます。あまり文学物を読まない方もササッと読めてしまいますよ。

                                   (堀内)