中央タクシー様に学ぶ

 皆様こんにちは。このところイスラム国による人質事件やウクライナをめぐる紛争、デフォルト寸前のギリシャの緊縮策と改革の放棄など、平和でありたいと願うはずの人間が直面する、如何ともしがたい目の前の欲や困難との葛藤を伝えるニュースが溢れています。正直なところ諦め半分で、私の世界のことではないと切り分けることでしか、こうしたニュースと折り合えない私ではあります。すみません、ちょっと暗~い書き出しでしたね...

 さて、皆さんは長野市にある中央タクシーさんをご存知ですか?最近は経済誌に限らず、テレビなどでも紹介されているので、私よりも詳しくご存知の方も多いかも知れません。先日、幸運にも同社の宇都宮恒久会長からお話を聞くことができました。

 どんな仕事も「大変だなー」と感じることはあるのでしょうが、お話を聞くうち、「うちがタクシー業界でなくて良かった」と真剣に思ってしまいました。努力の種とも言える“増車”や“料金”は過当競争を避けるために許されていないと言うのです。『量を増やして料金を下げる→お客様にこちらを向いてもらう』、このビジネスの当たり前が制限されているなんて!

 そんな中で中央タクシー様は、規制の及ばないジャンボタクシー分野への挑戦、徹底した人間集団としての絆づくりで成長の道を切り開いています。ジャンボタクシーはイレギュラーな用途向けにせいぜい2,3台、費用倒れを嫌って持たない会社もあるそうですが、中央タクシー様はなんと115台のうちの70台がジャンボタクシー。旅行者向けのミニ観光バスの機能や普通なら新幹線利用となる成田や羽田、セントレアに向けた航空便が大ヒットなのだそうです。新たな市場にタクシーが生き場所を見つけたって感じですね。

 人間集団としての絆づくりにおいては、車内で一人となるドライバーさんには難しいテーマだったはずです。それでも社員さんが一丸となれたのは、宇都宮会長が自分たちの仕事を単なるタクシー業やサービス業と捉えず、「交通弱者の人生に触れる仕事」「交通弱者の人生を守る仕事」と、その意義を具体的に定めたからではないかと私は思っています。多くの奇跡のようなエピソードが残り、仕事への誇りが生まれ、強い絆はそのようにして醸成されていったのだと。お客様から寄せられる感謝の声には、その仕事ぶりの一端を感じることができます。

「500円で得られる 生きていくための力に心からお礼申し上げます」

 これは、重度の障害をお持ちの方からの言葉です。今日を生きるのに必要な治療を受けるために中央タクシー様をご利用になっていたのでしょう。その筆致は失われた力を振り絞ってしたためられたまさに命の言葉。

 また、介護施設や病院に通う際にタクシーに頼るほかないおばあちゃん達からの言葉には、失礼ながら可愛いらしさすら感じます。もちろんそこにドライバーさんの奮闘、気高い人間性が垣間見えます。

「中央タクシーに乗って 私 幸せ」「乗らないときでも町で中央タクシーを見るとほっとする」「残り少ない命に幸せを与えてくれてありがとう」

 あるときは電話で、「若いドライバーさんが、年老いた私を“汚い”の素振りの一つなく、自分の手を引いて車に乗せてくれる。今はタクシーに電話をすることを思うと胸が高鳴るんです。」とも。

 このような声を寄せて下さった方の中には、ある時期からご利用が途絶えることもあるそうです。宇都宮会長はこれらの声を“もう二度と会うことはないのだとすれば、これは当社への遺言”と受け止めてその声に恥じない仕事ぶりを誓っていらっしゃるのです。

 ならば、私たちの仕事って何なんだ。タクシー以上にお客様に寄り添う機会のあること、長い時間を共にする機会のあることは明らかです。お客様が住まいのリフォームによって得る様々で本当の価値の中に私たちの仕事を問いたい。中央タクシー様に学んだ貴重な気づきを我が社に。今、私燃えてます!

プラスデコ代表 原田 学